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秋田地方裁判所 昭和58年(む)85号 決定

事件

主文

秋田地方検察庁検察官検事村山創史が昭和五八年八月九日付でなした別紙第一記載の接見等に関する指定はこれを取消す。

理由

一本件申立の趣旨及び理由は別紙第二記載のとおりである。

二当裁判所の判断

一件記録によれば、被疑者は公職選挙法違反被疑事実により昭和五八年八月八日逮捕され、次いで同月九日代用監獄象潟警察署留置場に勾留されたが、同日付で秋田地方検察官検事村山創史より用紙第一記載の接見等に関する指定がなされたことが認められる。

そこで本件指定の内容を検討すると、これは被疑者とその弁護人及び弁護人となろうとする者との接見等を検察官が別に発する指定書において指定する日時、場所及び時間に限つて許容するというもので、かかる指定の現実的効果は、弁護人をして検察官の具体的指定書を持参させない限り、被疑者と弁護人との接見交通を禁止するという形で、一般的に接見等を禁止し、例外的に右禁止を解除するという状態を生みだしているものである。

右のような性質上、本件指定は刑事訴訟法三九条三項の処分として同法四三〇条一項の準抗告の対象となることは明らかであり、一般的に接見等を禁止するという点で被疑者と弁護人等の接見交通の自由を認めた同法三九条一項の規定に背反するとともに、他面、弁護人に具体的指定書の交付を受けさせ、これを呈示させる手続の負担を課するという点で、同条三項本文の検察官の指定権の行使方法としてもその権限を逸脱し、法的証拠がないものである。

従つて、本件指定は検察官の権限を逸脱した違法な処分であるから、本件準抗告の申立は理由があり、本件指定は取消されるべきである。

よつて、刑事訴訟法四三二条、四二六条二項により主文のとおり決定する。 (片瀬敏寿)

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